まなぶひと #38

加藤那実

農業、学習支援、弁当配達、
イベント参加。
多彩な経験と人との交流で
充実の大学生活。

2023.06.30

農業、学習支援、弁当配達、イベント参加。多彩な経験と人との交流で充実の大学生活。

 「Team道草」は2012年に本学の集中講義を受けた学生が、「地域の人とのつながりを絶やさないように」という思いで立ち上げた地域連携型サークル。初期メンバーの思いを受け継ぎ、金山町や新庄市を中心に最上地方で地域活性化につながる活動を展開している。10代目代表を務める本学の人文社会科学部人文社会科学科3年の加藤那実さんは「コロナ禍で活動の機会が限られていましたが、2023年度は楽しい企画をたくさん考えています」と笑顔を見せる。

設立当初からメンバーが
10倍に増加。
10代目代表として
大所帯サークルをまとめる。

 Team道草は2013年3月に設立。金山町を訪問して課題を探り、地域活性化につながる解決策を提案する講義に参加した学生が、授業以外でも町民と関わりを持ち続けたいと活動を始めた。講義をきっかけにサークルに発展するのは、学内では珍しい。
 最近の活動内容は農業、学習支援、子どもや高齢者への弁当配達、地域イベントの補助、自主イベントの主催がある。これらの企画やイベントを通して、金山町と新庄市を中心とした最上地方で地域づくりに取り組んでいる。
 10年の節目となる2023年度は新入生が100人近く加入し、メンバーは大学1〜4年生と大学院生の計約150人。15人でスタートした初年に比べ、10倍もの人数だ。小白川、飯田、米沢、鶴岡の各キャンパスの学生が、学部の枠を超えて参加している。自由参加でイベントごとにメンバーを募るため、他のサークルと掛け持ちしている人が多い。
 2023年度の新入生歓迎フェスティバル(新歓フェス)には多くの新入生が見学に訪れた。「活動拠点の金山町や新庄市の出身という学生の中には、うちのサークルをよく知ってくれている子もいました。10年続くサークルなので、名前や取組が浸透していると思いました」と、先輩たちの功績を実感する。
 加藤さんは1年生の時にTeam道草に加入。入学直後にオンラインで開催された新歓フェスで知り、興味を持った。「地域活性化や農業に関わりが深い活動に惹かれました。当時の代表がすごく楽しそうに説明してくれたのも印象的で、充実の大学生活になると確信しました」と加入の動機を明かす。
 1年生の冬に先輩から誘いを受け、運営業務を担うプロデュースメンバーになった。役目は企画立案、参加者の募集、移動手段の調整、会計、学内外の人との打ち合わせや交渉、サークルメンバーへの連絡など多岐にわたる。
「学内外のいろいろな方とコミュニケーションを取る機会が増え、人脈が広がりました。仲間もできて、大学生活がとても充実しています」
 2年生の後期に10代目代表に就任。「貴重な経験ができると思い立候補しました。私に務まるかなという不安はありましたが、みんなが『支える』と言ってくれたので心強かったです」とメンバーに感謝する。大所帯のサークルを引っ張る立場になり、より責任も大きくなったが「楽しい」と表情は明るい。

2023年5月、金山町で行われたイベントに参加したメンバーで「Team道草ポーズ」をして記念撮影。

イモ類を育てて収穫し、調理。
人の温かさに触れた幸せな時間。

 加藤さんが1年生の時はコロナ禍で活動がほとんどできなかったが、2年生から徐々に活動できるようになった。夏休みに小学生や中学生を対象に学習支援を実施。子どもや高齢者に弁当を配達する「つばさお弁当お届けプロジェクト」は2023年度も継続している。Team道草の設立10周年の節目に金山町に恩返ししようと、そば打ちに挑戦。「『大学生が作るそば』で地域が盛り上がってくれたら」と、そば打ちが得意な金山町民に指導を受けて練習を重ね、ときどき町民への振る舞いや販売も行っている。

夏休みに金山町と新庄市で小中学生に勉強を教える学習支援を行った。

新庄市内のデイサービスセンターで作っている栄養満点の弁当を、近所の住民にお届け。

活動を続けられているのは「金山町の方の協力のおかげ」と、感謝の気持ちを込めてそば作り。

 自主イベントは新庄市で縁日を開いた。JR新庄駅近くに日陰棚「パーゴラ」を1年ほどかけて建設し、その完成を記念して企画。水ヨーヨーや輪投げは特に子どもに喜ばれた。地域イベントではお化け屋敷を実施した。構図の考案や仕掛けづくりから自分たちで準備した甲斐もあり、好評を博した。
 加藤さんが思い出深い活動の一つに挙げるのが、金山町での農業。2022年度は住民に畑を借りて、里芋やジャガイモ、サツマイモを苗植えから収穫まで行った。
 「地元の農家さんには農業指導などでお世話になりました。収穫したイモを使って天ぷらやポテトサラダ、山形の伝統的な芋煮を作っていただきました。町民のみなさんが用意してくださったおにぎりもおいしかったです。人の温かさに触れられて幸せな経験でした」と思い返す。
 コロナ禍による制限がほぼなくなった2023年度は、より精力的に動いている。5月に金山町で開催された「かねやま街市」の運営に協力。歩行者天国になった道路でチョークアートを行い、子どもたちにのびのびと絵を描いてもらった。
 「コロナの影響で2019年以来、久々の開催だったので盛り上がりました。まだまだ、やりたいことがいっぱいあります」と目を輝かせる。
 サークルの会費は半年につき1500円 、活動ごとに500円。レンタカーといった交通費を含む活動資金の大部分は謝礼や補助金でまかなっている。
「1年に1回だけの参加というメンバーもたくさんいますが、それでも楽しめるサークル。毎回メンバーが固定化してないので、初めて参加する人もなじみやすいと思います」

新庄市で行った縁日。来場した子どもが手作りの輪投げに挑戦。

2022年度に金山町で育てたイモを収穫。2023年度も継続している。

大学卒業後は農業に関わる
仕事を目指す。
地域づくりや
地域活性化に貢献したい。

 加藤さんは本学の人文社会科学部人文社会科学科地域公共政策コースに在籍。地域の活性化につながる事例や政策を幅広く学んでいる。本学では地域と密接に関わっているフィールドワークを行っているのも、志望理由の一つだった。
 小学生の頃に祖母と庭の手入れをしたり、おいしいものを食べるのが好きだったりしたことから漠然と農業に興味を持った。小学校の授業で日本の食料自給率の低さを学んで危機感を感じ、高校の授業をきっかけに農業を活用した地域活性化を学びたいと考えるようになった。
 大学卒業後は農業を通して地域の活性化につながる仕事に携わるのが目標。入学当初は公務員を志望していたが、最近は民間企業への就職も視野に入れている。講義やTeam道草の経験から視野が広がり、農業に関わる職業は公務員以外にも選択肢が多いと気付いたのが大きい。
 最近、Team道草出身の卒業生が数人で、地域団体「cokage(こかげ)」を立ち上げた。河北町地域おこし協力隊でもある先輩の一人と連携し、2023年夏に農村キャンプを計画している。「先輩の協力で活動の幅が広がっています。山形ならではのサクランボ収穫ができたら思い出深いキャンプになると思います」。
 Team道草に入って、大学生活がより充実していると感じている。
 「大学生はもちろん勉強が大事ですが、私にとってはそれと同じくらいかそれ以上にTeam道草のメンバーとして過ごす時間が大切。人との出会いを通して経験を重ね、人間性が豊かになっていると実感しています。数ある大学から山形大学を選んで入学した人に、山形の魅力を感じてもらえるサークルであり続けたいです」

かとうなみ

かとうなみ●宮城県出身。仙台市にある自宅から地下鉄、高速バスを乗り継ぎ、通学している。人文社会科学部人文社会科学科地域公共政策コース3年。経済学史演習のゼミに所属し、経済学の視点から地域活性化につながる取り組みなどを研究している。Team道草10代目代表。

※内容や所属等は2023年5月当時のものです。

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