まなぶひと #40

海藤汐恩

結果を求めて、本気サッカー。
山形県代表の座つかみ、
天皇杯本戦に進出。

2023.08.30

結果を求めて、本気サッカー。山形県代表の座つかみ、天皇杯本戦に進出。

 「大学でもサッカーを続けたい」と医学部サッカー部に入部した医学科4年生の海藤汐恩さんは、活動自粛を余儀なくされたコロナ禍を経て、マスクを外して仲間とグラウンドを駆け回り、大会に出場できる喜びをかみしめている。大学のサークルというとゆるい雰囲気で活動しているイメージもあるが、医学部サッカー部は結果を求めて日々練習。2023年春に出場した天皇杯の山形県予選は同世代や社会人チームなどを撃破し、優勝を果たした。

サッカーができる医学部へ。
代表に就任し、チームまとめる。

 海藤さんは小学4年生の時にスポーツ少年団に入り、サッカーを本格的に始めた。中学、高校ではサッカー部に所属。高校は山形市内にある山形東高で、自宅のある新庄市から片道約1時間半かけて通学し、勉強とサッカーを両立した。
 子どもの頃はアトピー性皮膚炎に悩まされ、皮膚科に通院した。徐々に症状は収まり、医療の重要性を痛感。将来は古里の新庄市で医師として働きたいと思い描くようになった。
「皮膚科の先生がとてもいい方でした。皮膚科医とは決めていませんでしたが、医師に憧れるようになりました。サッカーも続けたいし、医師も目指したい」と、本学の医学部医学科を志望。医学部サッカー部の選手でもある高校時代の先輩から「遊びではなく、本気でサッカーができる」と聞いていたのも決め手の一つだ。
 入学当時は今より選手の人数が多く、高い技術を持つ選手がそろっていた。「サークルの雰囲気が良く、楽しみながらレベルの高い環境でサッカーができると思いました。続けるなら、大会で優勝を狙うくらい真剣にやりたい」と強い気持ちで入部した。
 しかしコロナ禍で、本格的に活動を再開できたのは2022年の秋頃から。ミッドフィルダーを担う海藤さんは部の代表に就任し、「幹部」選手の一人として練習メニューを決めてチームをまとめている。
 「小学生の頃からサッカーを続け、大学生の今が一番レベルの高い環境でプレーできていると実感しています」と充実の表情を見せる。細かなポジショニング、戦術などを選手間で綿密に練り、「サッカーは頭脳戦」を最も体現できていると実感している。

2023年度の選手とマネージャーが集合。2022年秋頃から食事会やイベントも開催できるようになり、サッカー以外でも親交を深めている。

練習は週4日、ナイターが中心。
来季以降の「4冠」誓う。

 2023年度のメンバーは医学科1〜6年生と看護学科1〜4年生の選手18人、マネージャー11人。コロナ禍以前に比べて選手は少ないが、1年生1人を除いてはサッカー経験者だ。
 4月から12月上旬までのオンシーズンの練習は基本的に週4日。水、土、日曜は小白川キャンパスのグラウンドで、金曜は天童市にある山形県総合運動公園第2運動広場で活動している。練習場所を求め、南陽市の中央花公園多目的運動広場へ行くこともある。時間は変則的で水曜は19:00〜21:00、金、日曜は18:00〜21:00、土曜は12:00〜15:00。練習試合は本学の体育会サッカー部や他大学と行っている。

2022年に人工芝の整備が完了した小白川キャンパスのグラウンドは全天候に対応し、雨の日でも練習できる。

 冬のオフシーズンは積雪がなければ屋外で活動することもあるが、基本的には体育館などの室内で体幹トレーニングに取り組んでいる。実質的な監督やコーチはいなく、学生主体で運営。選手同士でアドバイスを送り合い、技術を磨いている。卒業したOBが練習に顔を出し、アドバイスをくれることもある。
 海藤さんにとって、入部後の一番の思い出は天皇杯。社会人チームや、本戦に進めばプロのクラブチームと対戦できる可能性がある大会だ。山形県サッカー総合選手権大会を兼ねた2023年の県予選は決勝まで進み、本学の体育会サッカー部と対戦。3点先制して前半を終え、本戦進出を決めた。
 「初戦から地道に戦い、決勝にたどり着くまでが結構大変でした。特に社会人チームと対戦した準決勝は2点先制されてしまい、苦しい試合でした。逆転勝利できて良かったです」と振り返る。

優勝を決めた天皇杯県予選決勝のスターティングメンバー。

 本戦は残念ながら初戦敗退。「対戦した社会人チームはパス回しが上手で、完全に相手のペースにのまれてしまいました。コロナ禍で試合や練習試合の経験が少なかったこともあり、試合勘不足を感じました」と悔やむ。
 医学部サッカー部の目標は、天皇杯の県予選優勝と本戦勝利、北日本医科学生体育大会(北医体)優勝、東日本医科学生総合体育大会(東医体)優勝、東日本国公立医学生サッカー大会優勝の4冠。これまでに3冠は成し遂げているため、海藤さんは「自分が現役のうちに、みんなと4冠を制覇したい」と、来季以降の4冠を誓う。

サークル通して人脈広がる。
充実の大学生活に。

 本学医学科のカリキュラムは、医療について幅広い分野を学んだ上で、臨床実習などの経験から、専門を深めることができる。今も交流が続く医学部サッカー部OBは現役の医師ばかり。現場の生の声を聞けるチャンスも多く、海藤さんは「将来を考える参考になります。OBの方とつながりを持ててありがたいです」と感謝する。
 医学部生は学業で忙しいイメージもあるが、海藤さんは「自分の場合は、サッカーもできる環境が大切。今は山形市内で一人暮らしをしていて、高校時代に比べて通学時間がかからないこともあり、サッカーと勉強、どちらもバランスよくできて充実しています」と笑顔を見せる。
 コロナ禍が落ち着いてからは、サークルの仲間や先輩との交流がより盛んになっている。食事会や、「入学してから初めて」という忘年会、追いコンなど楽しい思い出が増えている。

医学部サッカー部の追いコンは、卒業する先輩たちはスーツやドレス姿で参加するのが定番。イベントも幹部の選手やマネージャーが企画、運営する。

 制限の多かったコロナ禍を経て、学業もサッカーも全力で取り組み、充実の大学生活を送っている。

かいとうしおん

かいとうしおん●医学部医学科4年。山形県新庄市出身。医学部サッカー部代表。ポジションはミッドフィルダー。子どもの頃にアトピー性皮膚炎に悩まされていた経験から、帰郷して医師として働くことを目指している。

※内容や所属等は2023年6月当時のものです。

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