まなぶひと #39

相澤侑&尾形季洋

大好きな野球、
楽しみながら結果出す。
目指すは医学部対抗「東医体」頂点。

2023.07.15

大好きな野球、楽しみながら結果出す。目指すは医学部対抗「東医体」頂点。

 硬式でも軟式でもない準硬式野球は、硬式球に近いコルク芯をゴムで覆った準硬式ボール、硬式と同様の用具を使う日本生まれの野球。全国の医学部の多くは準硬式野球部を設置し、本学にも医学部の学生が所属する医学部準硬式野球部がある。2023年の「東北地区大学準硬式野球春季リーグ」は準優勝し、全国への切符を手にした。それより前の8月に、東日本の全医学部対抗「東日本医科学生総合体育大会(東医体)」を控える。目下の目標は東日本の頂点だ。

平日はナイター練習が中心。
限られた時間で
メリハリをつけて。

 医学部準硬式野球部には医学科1〜6年生と看護学科1〜4年生が所属している。練習場所は医学部生が学んでいる飯田キャンパスの野球場。ソフトボール部と共用のため、活動は基本的に火、水、木、土曜の週4日。授業が詰まっている平日は17:00〜20:00、土曜は9:00〜12:00に練習している。
 火曜は基礎、水曜は実戦形式などと曜日ごとに主となるメニューを変え、メリハリをつけた練習を心掛けている。大会前は試合形式を行う日が増える。土曜を含む週末は他大学や高校生と練習試合を行うこともある。

飯田キャンパスにある野球場が活動拠点。真剣に練習しながらも、笑顔の絶えない和やかな雰囲気だ。

 選手は23人中22人が野球経験者。練習メニューや練習方法は「幹部」と呼ばれる選手たちが中心になって考えている。平日の取材日は軽くアップし、キャッチボールやバント、ティーバッティング、スイング、守備、走塁などの練習を行った。
 幹部で主将を務める医学科4年の尾形季洋さんは小学4年から野球を続けている。「軟式と硬式の違いや、野球歴の異なる選手が集まっていますが、気軽にアドバイスを送り合える雰囲気。医学部に入って、こんなに楽しく野球ができるとは思っていませんでした」と充実の表情を見せる。

キャッチボールをする尾形さん。小学生の時はスポーツ少年団で軟式、中学時代はボーイズリーグ、高校時代は部活動で硬式を経験。

 限られた時間で選手が練習に集中できるよう、サポートしているのは16人のマネージャーだ。ノックの球出し、ボール拾い、スコアの記録、タイムの計測、カメラやビデオの撮影、部の公式SNSの更新など多くの役目を分担している。
 マネージャー長で看護学科2年の相澤侑さんは、高校時代も野球部のマネージャーだった。「大学では人数の多さもですが、選手とマネージャーの関係性にも驚きました。選手は私たちに常に感謝の思いを示してくれるので、自分たちにできることは何でもしたいという気持ちになります」とやりがいを話す。

ノックの球出しをする相澤さん。「新入生歓迎会で面白い部員が多いと思って入部しました。予想以上に楽しいです」と声を弾ませる。

 例年12月には選手が主体になり、マネージャー感謝祭を企画。ボウリングやミニ運動会などを実施し、マネージャーをねぎらう。

2022年のマネージャー感謝祭はボウリングで盛り上がった。賞状やプレゼントも選手が用意した。

春季リーグで
全国への切符を手にし、
炭酸水ファイトで
喜び分かち合う。

 東北地区大学硬式野球連盟の1部リーグに所属している本学医学部準硬式野球部の2023年シーズンは「東北地区大学準硬式野球春季リーグ」からスタート。けが人を抱えながら準優勝し、9月の「清瀬杯第55回全日本大学選抜準硬式野球大会」への出場を決めた。

「東北地区大学準硬式野球春季リーグ」は7勝3敗で準優勝。9月に金沢市で開催される全国大会に出場できる権利を獲得した。

 尾形さんは「優勝を逃したのは悔しいですが、限られた選手層の中でベストな戦いができました。入学前は準硬式野球で全国の舞台に行けると思っていなかったので満足しています」と喜びを語る。
 大会後は皆で、炭酸水を掛け合う炭酸水ファイトをして全国出場を祝った。「最高の思い出です」と尾形さんと相澤さんは口をそろえる。

飯田キャンパスの野球場で、シャンパンファイトならぬ炭酸水ファイトでお祝い。バケツの水も掛け、部員のテンションは最高潮。

 清瀬杯前の8月には、東日本にある全医学部対抗の「東日本医科学生総合体育大会(東医体)」が控えている。東日本の医学部生にとって、最も大切な大会の一つ。2011年以来となる優勝を、現メンバーで果たすのが最大の目標だ。
 尾形さんは「Wエースの金原広汰先輩と齋凌矢先輩、セカンドの成田俊之介先輩という主力3選手をはじめ、医学科6年生にとっては最後の東医体。今のメンバーで優勝したい」と力を込める。
  2022年の「東北地区大学準硬式野球秋季リーグ」では初優勝を果たした。主力3選手が引退後の開催だが、2023年は2連覇を目指す。

バント練習のために軽く投球。個人でジムに通い、筋力を強化している部員が多い。

つないで得点するチームスタイル。春季リーグを終えてからは、特にバント練習に力を入れている。

フォームを確認しながらスイング。チームメートからの意見を取り入れ、技術を磨く。

野球、学業、
アルバイトを両立。
コロナ禍を経て、
充実の学生生活。

 尾形さんは両親が歯科医師で、子どもの頃から医療系の仕事が身近だった。医療ドラマも好きで、将来の職業に医師を考えるようになった。
 数ある医学部を設置する大学から本学を選んだ一番の理由は「準硬式野球部で野球をしたかったから」。仙台市出身の尾形さんは仙台二高時代、学年は違うものの、当時仙台一高の硬式野球部員だった金原さんと対戦経験がある。「金原先輩は高校時代からすごい球を投げる投手でした」と憧れの存在だ。
 捕手の尾形さんは「金原先輩と同じチームになって、球を受けてみたいと思いました。学業と野球の両立を考えた時に、山形大学医学部が自分の中ではベストでした」と動機を明かす。
 入部後は金原さんと念願のバッテリーを組み、2022年の「東北地区大学準硬式野球秋季リーグ」は初優勝を果たした。尾形さんは最高殊勲選手賞と首位打者賞、金原さんは最優秀投手賞、さらに二人ともベストナインにも選ばれた。
 野球経験から、将来の仕事は整形外科医を選択肢の一つに考えている。スポーツドクターにも興味があり「野球に限らず、スポーツのチームドクターもやりがいがあると思っています」と将来像を模索している。
 相澤さんは高校時代、薬剤師にも憧れていたが、縁あって本学の看護学科に入学。「病気のことだけではなく、病気を防ぐ疫学やコミュニケーションなど幅広く学べているので、山形大学を選んでよかったと思っています」と表情は明るい。本学科では看護師の他、保健師または助産師の国家試験受験資格が得られる。「独身のうちは看護師として病院で働き、結婚したら保健師として勤められれば」と思い描く。
 尾形さん、相澤さんをはじめ、ほとんどの部員がアルバイトもしている。入学後約2年間はコロナ禍でサークル活動が存分にできなかった尾形さんは「コロナ禍は『時間がある』と勉強を後回しにしがちでした。野球もアルバイトもして、時間に制限のある今の方が勉強に集中できます」ときっぱり。相澤さんも「私も同じで、やることがいろいろあるからこそ、今のうちに勉強しようと思えます」と言う。
 学業やアルバイトと並行して野球に打ち込むことで時間のメリハリが明確になり、充実の学生生活につながっているようだ。  

あいざわゆう

あいざわゆう●山形県鶴岡市出身。医学部看護学科2年。2022年秋に医学部準硬式野球部マネージャー長に就任。

おがたとしき

おがたとしき●宮城県仙台市出身。医学部医学科4年。2022年秋に医学部準硬式野球部主将に就任。

※内容や所属等は2023年6月当時のものです。

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