まなぶひと #31

浅野未来

論文出版、アカペラ、海外体験…、
貴重な体験に満ちた大学生活。

2022.02.15

論文出版、アカペラ、海外体験…、 貴重な体験に満ちた大学生活。

まなぶひと#30で紹介した玉井史保子さんに続き、同じ農学部永井研究室の学部生がまたも快挙。浅野未来さんの完熟バナナ果実を用いたジャムの開発研究に関する論文が学会誌に掲載されたのだ。さらに、完熟バナナジャムの機能性成分量等について解明した研究結果が第2報として受理されており、4月の出版を待つばかり。コロナ禍で叶わなかった企業との商品開発などを補完してあまりある経験となった。 

サークル活動や海外経験で躍動、
キャンパスライフを満喫した1年

 中学生の頃から、将来は食品の開発に関わる仕事に就きたいと考えていた浅野さんは、そのために進むべき大学は?その大学に進学するために行くべき高校は?と逆算して進路を決めていったという。大学でより実践的に食品開発を体験することができれば、本当にやりたい仕事か、自分に適性があるかも見極められるからと、企業との連携による食品開発の取り組みが盛んで実際に商品化した実績もある研究室を探し、農学部の永井研究室に狙いを定めて本学への進学を決めた。
 小白川キャンパスで過ごした1年次は、様々なアルバイトをしたり、学生大使派遣プログラムで初めての1人渡航を経験したり、やりたいと思っていたことに次々挑戦。学生大使として2週間滞在したラトビアでは、日本語を教えながら日本文化や山形大学を紹介し、ラトビアの文化・実情を学び、現地学生との交流を通して視野を広げることができた。また、所属していたアカペラサークルでは、2年次に農学部のある鶴岡市に引っ越してからも週末には小白川キャンパスに熱心に通った。かなりハードな週末を過ごしていたようだが、アカペラの全国大会の運営にも携わり、とても充実していた様子。その充実感を糧に、3年次からは本学を選んだ本来の目的である食品開発に関する学びに邁進することになる。

浅野さん作のバナナジャム

何度となく試作を繰り返して完成した浅野さん作のバナナジャム。低糖度ながら十分な甘味が感じられて、クラッカーの塩味やヨーグルトの酸味との相性もよくてヘルシー。

バナナジャムの開発と成分研究で
SDGsにもつながる論文を発表

 3年次、専門性が増し、基礎実験なども履修し、後期からはいよいよ憧れの研究室に配属になり、企業との食品開発などで充実の日々になるはずだった。ところが、新型コロナの感染拡大により前期の授業はほとんどがリモートになり、実験などの実践的な学びの機会は失われてしまった。永井先生はその分もしっかり補ってくれた上で、商品開発に代わる貴重な体験として「地域の課題解決に向けた研究を実践し、在学中に論文を学会誌に出版する」というミッションを提案。研究室の同期、玉井さんと切磋琢磨し、この大学院ドクターレベルの難関に挑んだのだ。
 浅野さんが着目したのは、安価で手頃な果実として人気の「バナナ」。追熟後に出荷・販売されることの多いバナナは、他の果実類に比べて品質劣化が早く、食品廃棄につながってしまうことを残念に思っていたことや、山形県戸沢村で温泉熱を利用してバナナ栽培が行われ、「雪ばなな」として販売されていることなどが背景にあった。浅野さんは完熟バナナ果実を用いた新たな加工食品を開発することによって、食品ロスの低減や雪ばななの販路拡大に貢献したいと考えたのだ。果実の加工品としてジャムは一般的だが、バナナのジャムはほとんど存在しないことから、バナナジャムの開発と栄養成分・機能性成分について論文にまとめた。

浅野さんと永井先生

完熟バナナジャムの機能性成分量や関連機能性について解明するための実験。真剣な表情でタンパク質の分析を行う浅野さんと指導の目を光らせる永井先生。

浅野さんと研究室同期の玉井さん

研究室同期の玉井さん(右)とお互いを支え合いながら様々な課題に挑み、「在学中に論文を学会誌に出版する」というミッションを成し遂げた。

卒論テーマは米粉パンの品質改良
将来の夢は、地元宮城県での出店

 浅野さんは、様々な実験と試作を繰り返し、バナナの自然な甘さとねっとりとした食感を残し、バナナ本来の色を生かしたジャムの製造技術の確立に成功した。この製造技術を地域のみならず、ジャム類など関連産業において広く活用・応用してほしいと考えている。この研究成果は「完熟バナナ果実を用いたバナナジャムの調製とその物理化学的特性ならびに官能特性」として、「日本食品化学学会誌28巻3号」に掲載された。さらに、完熟バナナジャムの機能性成分量や関連機能性について解明し、その研究結果は同誌に論文の第2報として投稿し、受理されている。
 本研究を卒論としてさらに掘り下げることも可能なのだが、浅野さんは別のテーマ、美味しいグルテンフリーのパンを作るための米粉パンの品質改良についての研究を進めている。学会誌への論文掲載も卒論もやり抜く強い意志と自信を胸に、この春からは社会人として活躍の場を関東圏の食品会社へと移す。「その会社でノウハウをいろいろ吸収して、将来は地元宮城でお店を開きたいです。カフェとかケーキ屋さんとか、お客様が幸せな気持ちになれる場所」と、将来の夢も明確だ。バナナジャムや米粉パンの研究もちゃんと夢への布石になっている。美味しさにも栄養にも妥協しない浅野さんらしいお店のオープンを楽しみに待つとしよう。

完熟バナナジャムを瓶詰め中

鍋で煮詰めて完成した完熟バナナジャムを瓶詰め中。浅野さんがこだわったバナナならではのねっとりとした食感が見た目からも伝わってくるようだ。

浅野未来さんからのメッセージ

あさのみく

あさのみく●農学部食料生命環境学科4年。宮城県出身。中学生の頃から食品開発に関心を持ち、実践的な学びで定評のある永井研究室へ。バナナジャムの製造技術と機能性成分に関する研究論文で2度学術誌に掲載へ。

※内容や所属等は2022年1月当時のものです。

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