まなぶひと #41

齋藤鴻樹

3Dプリント技術が
スマート農業の一助に
生産性向上と収穫ロス解消への
新アプローチ。

2023.09.30

3Dプリント技術がスマート農業の一助に生産性向上と収穫ロス解消への新アプローチ。

 工学部機械システム工学科の齋藤鴻樹さんが所属する古川研究室は、他大学との共同研究や交流がとても盛んだ。マッシュルーム等を収穫するピッキングロボットの研究開発に取り組む立命館大学の研究グループもその一つ。山形県のマッシュルーム産地・舟形町を訪問取材するという同グループに齋藤さんも同行し、それをきっかけにマッシュルーム栽培やスマート農業に関心を持つようになった。マッシュルームは、収穫期の成長が極端に速く、農家の人手不足もあって生産量に対して収穫量が追いつかないという課題を抱えている。代表的な解決法がピッキングロボットの開発なのだが、柔らかく傷みやすいマッシュルームのピッキングは非常に難しい。  
 そこで、齋藤さんたちのグループは3Dプリント技術を駆使した立体的な培地によるマッシュルーム栽培という全く新しいアプローチの収穫システムを提案。3Dプリンターで柔らかい樹脂製の造形物を作製し、中心部に菌床を詰めて覆土を被せた培地ブロックでマッシュルームを栽培するというもの。従来の平面栽培と違って側面や下面へもマッシュルームが成長できるため生産効率の向上が期待できるとともに、造形物に異方弾性という特定方向に変形しやすい特性を持たせることで培地を圧縮変形させて覆土を押し出してマッシュルームを一挙に剥落させる自動収穫機構。しかも、中の菌床は造形物内に保持され、次の栽培で再利用できるメリットもある。  

地元の農家の方とも直にコミュニケーションを取りながら、新たな収穫システムを検討している。

 この研究成果は、3D造形の専門家が集まる学術会議4DFF2022で高い評価を受け、優秀賞を受賞。また、日本の食を考えるイベントなどにも参加したことで食や農業への関心がさらに高まったという齋藤さん。これからは大学院で本研究を加速させるなど、IoTによるスマート農業の構築に貢献したいと考えている。  
 慢性的な人手不足や大規模農業を展開しづらい国土の狭さなど、日本の農業が抱える課題解決に機械工学の観点からアプローチする試みに今後も期待したい。

マッシュルーム栽培を見学する様子。

さいとうこうき

さいとうこうき●工学部機械システム工学科4年。宮城県出身。学術カンファレンス4DFF2022で優秀賞を受賞。大学院に進学し、機械技術によるスマート農業への貢献を目指す。

※内容や所属等は2023年2月当時のものです。

みどり樹

この内容は
山形大学広報誌
「みどり樹」Vol.83
(2023年4月発行)にも
掲載されています。

[PDF/4MB]

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