まなぶひと #48
白石 匠
建築という視点を通じて、
学内外に新たな交流を生み出す。
2024.07.12
まなぶひと #48
白石 匠
2024.07.12
工学部建築・デザイン学科の学生が多く所属する「もの・まちづくりサークル縁(えん)」は建築という視点を通じて、交流を生み出す活動を行っている。本学のチャレンジプロジェクトに採択された「かかわりばしプロジェクト」では学内の交流を促す作品を考案。建築設計展「くてん、」の運営、空き家のリノベーションなど活動の幅は広く、代表を務める2年の白石匠さんは「建築に関する実践的な学びや経験ができ、まちづくりにも携わっています」と充実の表情を見せる。
もの・まちづくりサークル縁は2020年10月に設立。現在は約80人が登録し、ほとんどが工学部建築・デザイン学科の学生だ。
名称の縁には「えん(巡り合わせや関わり合い)」「ゆかり(なんらかのつながり)」「よすが(身や心のよりどころ)」「えにし(運命的なつながり)」など、複数の読み方と意味がある。サークルという枠を越え、多くの地域や人と関わることができるようにとの思いを込めて命名。さらに「EN」にはEncount(出会う)、Nurture(育む)の意味がある。仲間や地域とであい、設計・DIYなどの活動を通じて知識や技術を育むサークルを目指し、「えん」の呼び名にした。
コロナ禍が明け、メンバーで気兼ねなく交流できる機会が増えた。2023 年度の前期にバーベキューを開催し、参加者で記念撮影。皆の弾ける笑顔に楽しさが伝わってくる。
活動は学内外で展開。本学が2022年度から始動した①地域を元気にする、②山形大学を元気にする、③自分たちの夢を叶える、この3つをテーマとし、大学や地域との関わりを深める魅力的な活動「学生チャレンジプロジェクト」では、代表メンバーで考えた企画が2年連続で採択され、2023年度は「かかわりばしプロジェクト」に取り組んだ。
木材を用いた棚のようなものを制作し、米沢キャンパスのホールに設置。白石さんは「通行人みんなで作る、完成しない作品です。その都度自由に使ってもらい、新たな交流が生まれ続けるというコンセプトで考えました。展示ブースでもいいし、フリーマーットの会場にしてもらってもいいです」と紹介する。
2023年度の「学生チャレンジプロジェクト」に「かかわりばしプロジェクト」が採択された。棚のような2つの作品は写真のように離して置いても重ねてもいい。幅を変えることもできる。
実際に作品が使用されていることを聞いた白石さんは「誰かに使ってもらえたという不思議な感覚とうれしさがありました。より快適なキャンパスになるように開発したので満足しています」と笑顔を見せる。
かかわりばしプロジェクトは2022年度に採択された「きっかけばしプロジェクト」の第2弾。きっかけばしはキャンパスの中庭にベンチを作り、くつろげるスペースを作った。白石さんは「先輩が中心になって進めました。階段式のフリースペースで、今も学生の憩いの場になっています」と説明する。
学外での活動として、「東町プラットフォーム」がある。米沢市大町と本町を中心とした「東町」と呼ばれるエリアのまちづくりを行う官民連携のプロジェクトで、縁のメンバーは空き家の改修に挑戦。クラウドファンディングで資金を募り、地元建設会社の協力も得て、学生用シェアハウスとまちの人々が集える空間を一体化させた施設を造った。2024年3月に完成し、翌4月からサークルメンバーの新2年生2人が暮らし始める。
白石さんは「米沢市は空き家が多く、まちの空洞化が深刻な状況。建築を通じて、まちの活性化に取り組むサークルとして貢献しようと、春に卒業する4年生が中心になって進めました。ハーフビルドシェアハウスなので、居住者がDIYをしながらより良い空間を造り上げていきます」と現在進行形であることを強調する。
白石さんがもの・まちづくりサークル縁に入ったのは1年生の秋。山形市内で開催されたサークルの芋煮会に参加したのがきっかけだ。「メンバーはほぼ全員が建築・デザイン学科の学生と聞き、授業以外でも建築に触れられる機会を増やせると思いました」と加入の動機を明かす。
メンバーになってからは、4年生の卒業設計、2、3年生の課題作品を発表する建築設計展「くてん、」の運営に尽力。その積極的な姿勢が先輩メンバーの目に留まり、白石さんは2年生の秋にサークルの代表に就任した。
2023年度は白石さんが建築設計展の運営を指揮。会場のレイアウトから考え、設営も行った。
建築設計展に向けて、米沢キャンパスで準備を進める白石さん(左)やメンバー。山形市内での開催のため、会場の詳細なサイズや雰囲気を把握するのに、少し苦労したという。
建築設計展には学生はもちろん、学生の家族や地域住民、高校生なども足を運んだ。
「大学受験の直前に開催したので、たまたま建築・デザイン学科を志望する受験生も見に来てくれてうれしかったです。縁の活動に興味を持ってくれた山大生もいました。展示会を通して縁の活動を広められました」と手応えを語る。
「人と人の関わりを得られるのも展示会の良さ。個人的には山形県や宮城県の大学と合同で開催し、新しい交流や体験の機会を作れたらという思いがあります。例えば、前半は山形で、後半は仙台で開催すれば、互いに学び合えるはず」と、他大学との交流機会を増やしたいと考えている。
2023年に山形市で開いた建築設計展「くてん、」の様子。「工学部の1年生は小白川キャンパスに通うので、山形市で開催することで1年生が建築に触れる機会になりました」と白石さん。
白石さんは高校生の時に建築に興味を持ち、建築士の資格を取得できる大学を探し、本学の工学部建築・デザイン学科を受験した。「高校の授業ではありませんでしたが、人が集う拠点があれば、人口が減少している地方でも交流を生むことができるという話しを聞きました。人が集う拠点は居住スペース、コミュニティースペース、商業施設などいろいろあり、奥が深い世界で面白そうだと思いました」と志望動機を語る。
本学入学後は講義やサークルの活動を通し、歴史的な建築物への興味が一層高まっているという。2年生から米沢市で一人暮らしを始め、市内を散策して歴史的町並みの魅力を体感していることも大きい。「米沢キャンパスの周辺を少し歩いただけで、さまざまな古い建物に出合えます」と目を輝かせる。
春から3年生。「出身地でもある宮城県仙台市の魅力を発信してまちづくりや地域の活性化につながる仕事に就ければ」と夢を膨らませる。
本学の建築・デザイン学科を志望する後輩には「少人数制ということもあり、製図台が1人1台用意され、教授に相談しやすく、研究に打ち込める環境です。サークル活動をすることで、大学生活は一層充実したものになると実感しています」とエールを送る。
工学部の2年生以上が通う米沢キャンパスで取材に応じてくれた白石さん。「米沢の歴史を感じる建物に見入ってしまいます。キャンパス周辺に学生向けの賃貸物件が多くあります」と話す。
しらいしたくみ●宮城県仙台市出身。工学部建築・デザイン学科2年。もの・まちづくりサークル縁代表。将来は地元仙台でまちづくりに関わる仕事を志望している。
※内容や所属等は2024年3月当時のものです。