まなぶひと #46

太田明日登&今村稜

声だけで奏でる音楽を追求、
アカペラから広がる“人の輪”。

2024.05.15

声だけで奏でる音楽を追求、アカペラから広がる“人の輪”。

 山形大学の学内行事をはじめ、県内の地域イベントのステージから県外のアカペライベントまで、全国を股に掛けて活躍する「アカペラサークルSmile☆」。「大学生活の中で、これほどまでに熱中できることがあったのは、思いもよらない嬉しいことでした。このサークルに入らなければ知り合えなかった人たちと関わり、音楽の知識も身につきました」と語るのは前サークル長の太田明日登さん。メンバーの今村稜さんとともに、活動にかける思いを語ってくれた。

「アカペラサークルSmile☆」の普段の練習は、4〜6人のバンドごとに取り組むスタイル。継続的に活動する「正規バンド」の他、特定の曲の演奏のためにメンバーを入れ替え単発の「企画バンド」も組みながら、一人一人が挑戦を続けている。

仲間が集まれば、
体ひとつで演奏可能
異なる音程を重ね、
生み出すハーモニー。

 楽器を用いず、人の声だけで演奏する「アカペラ」。リード、コーラス、ベース、ボイスパーカッションによるバンド編成で複数の音程を重ね「ハモり」と呼ばれるハーモニーを作り出す。
 「機材も不要で、人が集まるだけで演奏できるアカペラは『音楽の究極』だと感じます」と語るのはSmile☆に所属する今村稜さん。「最近は音域が高く男性1人では歌えないような楽曲もありますが、アカペラであれば音域が低い人にも輝けるパートがあって、たとえリードボーカルとして音は取れなくても、ベースやボイスパーカッションとして演奏できます」と説明する。
 太田さんも「他人のハモりを聴くのも自分でハモるのも楽しく、心地いい。1人では演奏できないからこそ生まれる“人の輪”もアカペラの良さだと思います」と力を込める。

定期ライブなどアカペラサークルSmile☆のメンバー全員で歌うステージも圧巻。

コロナ禍を経て
歌える喜びを痛感。
強みを伸ばし、
活かすアレンジも。

 アカペラサークルSmile☆のメンバーは50人以上。普段は飯田、米沢、鶴岡の各キャンパスで学ぶメンバーも、拠点となる小白川キャンパスに通って練習している。
 移動に時間がかかるため、平日は学業の傍らアルバイトで交通費を稼ぎ、土・日曜の週末の時間をサークル活動に注ぐのがルーティンになっているメンバーも。オープンキャンパスで活動の様子を映像で見て「『これは青春だな、大学生になったら絶対にアカペラサークルに入ろう』と決めた」という太田さんもそのひとりだ。
 入学当初はコロナ禍の最中で、活動はオンラインによる交流会などに限られ、ようやく歌えるようになってからも密を避けるため、音の反響がなく互いの声も聴きにくい屋外でマスク着用での練習を余儀なくされた。「制限があっても人との関わりやコミュニケーション自体が好きなので、活動は楽しかった。でもこの制限を経験したからこそ、解除された今は存分に活動できる喜びを感じます」と太田さん。
 その太田さんが、“即興でハモれる”特技、ピアノ経験があり音楽の知識があることに目をつけて勧誘したのが今村さんだった。
 もともとアカペラに興味はなかったものの、参加するうちに歌うことはもちろん、バンドの編成に合わせ原曲をアレンジする楽しみにもはまっていったという今村さん。「アカペラのアレンジは“他人のことを考える”時間です。『このメンバーはこれが苦手』『練習でこう歌っているから、ここを変えると、さらに活かせるかもしれない』など、自分以外の人の強みや特徴をこれだけ考え続ける時間は、他にないと思います」と話す。

山形県生涯学習センター「遊学館」で開かれる定期ライブ

 アカペラサークルSmile☆の活動の集大成となるのが、年1回の定期ライブだ。各都道府県からサークル員の家族、友人らが集まり、地元の人たちはもちろん会場となる山形県生涯学習センター遊学館の図書館でたまたま勉強していて当日ポスターを見た、という高校生など、多くの人たちが来場する。
 「お金をいただく有料ライブなので、適当なことはできません」と、2023年度実行委員長を務めた今村さん。
 「学内でオーディションを行って、選ばれた出演者はサークル内の皆の思いを背負い、しっかりリハーサルした上でステージに立ちます。受付から照明、音響の管理まで運営もメンバーでこなします」と話す。
 2023年度のプログラムはテレビの音楽番組になぞらえMCがバンドを紹介していく趣向。コロナ禍で開催できなかった年に、本来行われるはずだったスタイルを引き継いだ。

定期ライブ後の集合写真

他大学の仲間とも切磋琢磨、
全国大会出場にも挑戦。

 2023年からは、東北と新潟の国立大7学合同による2泊3日の「七大合宿」に参加。全国大会にも出場する強豪ら大学や学部・学科、学年の枠を超え、大学院生から学部生までその日発表された混成メンバーでバンドを結成し音を合わせる。「合宿をきっかけに“人の輪”が一気に広がり、これまで全く関わりのなかった大学の年上から年下まで、たくさんの仲間と知り合えました。別のイベントで再会し『久しぶり』と声を掛け合える関係が生まれた」と太田さんは喜ぶ。
 こうした他大学との交流も刺激になり「全国大会出場」への思いも強まっているという。
 今村さんは、キャンパスの距離が近く平日もバンドが集まって練習できる他大学と比べ、自分たちに足りないのは「練習量」と痛感。「質の高い練習をしなければいけないと感じています。平日、集まれなくても個人で練習できることはあります。例えば声のコントロール。声帯から出した音の響かせ方一つ取っても、同じ音量でも鼻で増幅して出すのか、口で広げて出すのかで聞こえ方が違ってきます。曲の雰囲気やハモる相手によって変えることで、よりきれいにハモらせることができるはず。他大よりも練習時間が取れない分“頭”を使って理論を固め、バンドメンバーやサークル員に思いを伝えていきたいと思います」。
 アカペラサークルSmile☆がどんな進化を見せてくれるのか、これからも目が離せない。

仙台で10月に開かれる「伊達な街四丁目アカペラストリート(伊達アカ)」出演時の様子。「伊達アカは全国からエントリーのあった中から審査され、合格したバンドだけが出演できるイベント。商店街のどこを見てもアカペラのステージがあって、9月の七大合宿で出会った他大学のアカペラサークルの人たちとも再会できます。幸せな空間です」(太田さん)、「大学2年だった2022年度は応募しましたが落選して出られず、観客として足を運んだ会場で『どうして自分はこのステージにいないんだろう』と悔しい思いをしました。“伊達アカ出演”という目標が1年間の練習のモチベーションになりました」(今村さん)

おおたあすと

おおた あすと●農学部食料生命環境学科3年。2023年12月まで「アカペラサークルSmile☆」サークル長を務めた。人と話すのが好きで、卒業後は営業職を志望。「アカペラを通して社会人との繋がりも増えました。これから『社会人アカペラ』も確立していきたい」

いまむらりょう

いまむら りょう●工学部情報エレクトロニクス学科電気・電子コース3年。2023年度「アカペラサークルSmile☆」定期ライブでは実行委員長を務めた。山形大学工学部アカペラサークルLien(リアン)にかけ持ちで参加している。卒業後は、大学院に進学予定。

※内容や所属等は2024年3月当時のものです。

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